はじめに

チームラボの高須さんがメインとなって開催されている深圳観察会、これの第7回ニコ技深圳観察会(2017年04月)へ参加してきました。

ニコ技深圳観察会の各種情報については以下を参照してください。情報は過去の参加者の方々が沢山アップしてくれています。

自分のことについて少し書くと、現在はフリーランスでWEBアプリケーションのフロントエンドとバックエンドの設計や開発をしていたり、少しだけiOSとAndroidも開発していたりします。Maker的な面で言えば昔からそういったことが好きでして、Maker Faireの前身のMake Tokyo Meetingから観に行ったり、ArduinoやらRaspberry Piとか趣味でチョロチョロ触ったりしています。でもMakerよりもHackerというもののほうがどちらかというと好きな人種かもしれません。たぶんモノを作るよりも壊すことの方が好きな人種です(スミマセン)。

そんな人から見た現在の「深圳」を書きます。書きますとは言っても精緻なレポートではありません。ただの私見です。感想です。そして「現在」と言っているのは、おそらくこの街は成長のスピードがものすごく早いようなので、数ヶ月でバンバンとシステムが変わるであろうからです。
深圳ガイドやら渡航法なものは、高須さんのブログ(http://ch.nicovideo.jp/tks/ )から辿ると結構見つかりますのでそちらを参照ください。

動機

さて「深圳(Shenzhen)」というとみんなどうゆうイメージを持つんでしょうか。「モノづくり」、「工場」、「怪しい家電が大量にある」、「町中でドローンをビュンビュン飛ばしてる」、などなどそういったワードが出て来るのではないでしょうか。実際自分もそういったワードを聞いていてそこから興味を持ちました。そして参加する至った強い理由としては、茂田さんのブログ記事(深圳クエスト2017 / http://shigeta.com/?eid=231)を見て深圳という街をハックしているような雰囲気が伝わってきて(もちろん観察会のレポートも面白い)、「これは行かねばなるまい」と思ったからです。「なんだかよくわからない先端を行っているらしい怪しげな街を乗り切ってハックする」とかもう熱くならないわけがありません。

深圳という街

深圳という街についてですが、歴史的な側面についてはほとんどが高須さんや伊藤さんから口頭で聴いただけなので、自分で調査したものではありません。理解不足や誤認識もあるかもしれません。この点を了承した上で読んでください。

つい30年ほど前までは寂れた漁村であった深圳ですが、中国最初のが経済特区に指定され、香港への輸出のバックヤードとなるべくして工場などが出来てゆき成長してきたようです。そしてだんだんと成長してゆく過程で深圳の工場などの強みを活かして産業を作ろうということになり、深圳の産業グループ・賽格電子集団(Shenzhen Electric Group:SEG, http://www.seg.com.cn/)が東京の秋葉原あたりをモデルとして開発を始めたのが、電子部品などが小さな店舗で所狭しと詰め込まれた電気ビル「賽格広場(SEG Plaza)」のようです。このビルが発端となり、次々と同様のビルが開発され、現在の華強北(ファーチャンペー)の電気街になったようです。

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Photo by Yosuke Tanaka

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Photo by Yosuke Yamada

「なったようです」と書きましたが、これもここ数年でもどんどんと開発が進んでいるようで、何度か来ている人達でも数ヶ月の間で変化が大きく驚きがあるようです。確かに事前にネットで「このあたりに◯◯の店がありました」というような、数ヶ月にアップされた記事などを読んでからその場に行ってみても既に違う施設が開発されているようなケースもありました。おそらく日本でネットで調べておいてから華強北に向かっても、この情報は街の変化のスピードに耐えられないのではないでしょうか。深圳・華強北の最新情報をネット越しに得るには、アーカイブとしてのインターネットはあまり機能しないかもしれません。そして日本語の情報だけでは現状足りないでしょう。そしてインターネット越しに情報を得るよりも実際に目の当たりにする方が圧倒的に刺激的です。

そして、日本では見ることができないであろうディープな部分としてはスマートフォンを中心としたデバイスのパーツ取りと販売です。華強北の少し南のゾーン、華強路駅付近には怪しげなスマートフォン解体マーケットがあります。パーツ売り場も様々なのですが、発売されたばかりのiPhone7レッドの筐体などが既に販売されているのも驚きでした。そして外装パーツ以外のものでも下記の写真のように、まるでデパートの化粧品売場のように綺羅びやかに飾ってショーケースの中に展示されて若い女性が売り子として販売してる景色など、完全にサイバーパンクです。おそらくここに義体のパーツがショーケースに並んでても違和感はないでしょう。

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少し危ないゾーンでもあるため撮影は出来ませんでしたが、路上で豪快にスマートフォンを叩きつけて分解をしてパーツ取りをしている方々も居ました(撮影してるとバレると怒られるようです)

電子決済とシェアリングエコノミー

直接「深圳が」というテーマではありませんが、この街のエコシステムを知るにあたり外せないものが「wechat payment」です。wechatというと「テンセントがやってるよくわからないデカいチャットサービス」とか「ちょっと意識の高い人が使ってるチャット」などのイメージがあるかもしれませんが、それはwechatのごく一側面でしかありません。「チャットと決済サービスをベースとした巨大プラットフォーム」というのが今回観察会で思った自分の印象です。細かな部分は他の方のレポートを読んでいただくのがより正確な情報となり、また少し大げさかもしれませんが、とにかくこの街では現金が1元もなくてもwechat paymentのwalletの中にお金が入っていれば生活に困らないように出来ています。飲食店にも、パーツ屋にも、至る所にQRコードがあり、これで決済が完了します。

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Photo by Yosuke Yamada, Yosuke Tanaka

写真左、レンタル自転車を借りるのもwechatでQRコードを読み取って支払い、ロック解除。どこで乗ってどこで乗り捨ててもOKというサービスが複数社から提供されています。町で自転車乗っている人のほとんどがこの手のレンタル自転車でした。この街ではたぶん「自転車を所有する」という概念は無くなってきているのではないでしょうか。また、当然クラックする人は現れますが、とにかく始めてしまって問題はあとから解決する、というスピード感のようです。
写真右、路上で謎のUSBケーブルを手売りしている。ここでもwechatのQRコードを交換するだけで決済が完了します。そして少し人が集まっているだけで関係ない人が「なんだなんだ」と寄ってきます。たぶん街の人達が常に新しいものを欲しているのではないでしょうか。

Industryとしての深圳

「モノづくり」という側面を見せる深圳ですが、やはり歴史的な経緯なのか「ホビーとしてのモノづくり」よりも「世界の工場」という面が強いように思えます。ですので、数多くの工場があるようですが、そんななかでも今回の観察会の中で一番キレている工場(組み立て工場)がAsh Cloudでした。


http://cdn2.ashcloudsolution.com/wp-content/uploads/2016/12/ashcloud_540p.mp4

この工場では社内の勤怠・コミュニケーション・経理処理などから工場のラインの管理に至るまで全てをiOSをベースとしたシステムで統合的に管理され、工場のラインでの製品組み立て・箱詰めのような部分のみ人間が行なうという狂気に満ち溢れたシステマティックな世界に包まれていました。

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Photo by Yosuke Tanaka

AIやロボットの技術進展により人間の職、特に単純労働が奪われるという話は昨今よく耳にしますが、現状においてはフレキシブルに対応が可能な人間が単純作業をいくつもこなし、システムがそれらの人間を管理するという形が合理的であるという理念の元こういったシステマティックな組み立て工場が出来たのでしょうか。もちろんラインにロボットを組み入れることも現在検証中のようで、これが実現すると完全なオートメーションが完成するのかもしれません。そしてこのシステムですが、財務的な部分以外は顧客がリアルタイムに状況を把握できるようにアプリケーションが顧客にも提供されているようです。構内も洗練されたデザインで統一されており、「狂気」以外の言葉が見つかりませんでした。深圳がハードウェアの側面から注目されているのは周知されていることかと思いますが、こういった統合的なシステムの面でも抜きに出た企業があるというのが凄いことだと思いました。当然のことながら相当にテンションが上がりました。

Maker Space

「世界の工場」としての深圳がフィーチャーされますが、やはりいわゆる「モノづくり」が好きなMakerが多いからこういった進化を遂げたのでしょうか(鶏と卵論にはなるかもしれませんが)、どうなのでしょうか。どちらが先かはわかりませんが、やはり深圳にもMaker Spaceがいくつか稼働しています。そんな中でも一番印象的だったのが、seeed studioが運営しているChaiHuo Maker Space(柴火创客空间)

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他のMaker Spaceがスタートアップ・起業という文脈と不可分なものとして語られる中でも、このChaihuoはホビー・DIYの精神を保ったままの存在のようでした。実際各企業やMaker Spaceや工場を回ってからここへたどり着いた際になんだかホームグラウンドに帰ってきたような落ち着きを感じました。これは深圳のOCTと呼ばれているクリエイティブを発信する大きな公園のような施設内に存在しているという理由もあったからかもしれません。

そんな中で説明をしてくれたのはseeedの社員のViolet Suさん。

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Photo by tks

深圳のメイカーとイギリスのメイカーをつなぐためにイギリスに1ヶ月滞在していた際の事をプレゼンしてくれました。とてもパワフルでさらにとても聴きやすい英語、そして常に笑顔が絶えず、本当にこの会社・仕事、そしてMakerが好きなんだろうな、という事がひしひしと伝わってきました。彼女自身はエンジニアなどではないようですが、ロールモデルにしたいような人だと思いました。

日本はどうなのか

観察会のメンバーで晩御飯を食べた後などに、「深圳は凄すぎる」「日本は終わった」「日本が勝てるのはもうトイレしか残っていない」などなどお酒が入った勢いもあり喋り散らしていました。自分もツイッターでそんな発言をしたりもしました。確かにワールドワイドに展開する企業や経産省の役人の方々などはそういった競争の中に居る方もいるかと思います。ですが、そういった枠の視点を少し大きく、もしくは小さく見直してみるとどうなのでしょうか。国がどうこうとかよりもアジア全域が活性化すれば、とか地球全域が楽しくなれば、とか。もしくは自分自身さえ楽しければ国とかどうでも良いのでは、とか。

ソフトウェアの世界ではオープンソースというものが広がったお陰で様々な技術が加速度的に進歩し、今のインターネットがここまで進歩したのも技術がオープンになったからであることはみなさんよく知っているところかと思います。それが深圳ではハードウェアにも大きく関係しており、公板(ゴンバン)/公模(ゴンモウ)というパブリックなマザーボード/外装をシェア/コピーしてゆくことにより様々な新しい製品が生まれているようです。

様々な規制を掛けて顔色を伺ったり保身をするよりも、とにかくオープンにしてシェアして混ぜ合わせてカオスな状態になるくらいまで進めてゆくほうがクールでクレイジーで楽しいものが生まれるのではないでしょうか。そんな事を思い知らされた観察会でした。

まとめ

1人で情報を集めて深圳を観に行っても華強北を見て終わりになってしまうかもしれません。深圳のエコシステムを色々な角度から見られるという点においても、このニコ技深圳観察会は大変有意義なものですので、おすすめです。ソフトウェア、ハードウェア、WEBやらITと名のつく各種業界にいらっしゃる方々は是非一度深圳を体験すると良いと思います。特にcivic tech界隈の方々はどうでしょうか。

10月予定のMaker Faire Shenzhenには是非行こうと思っています。

追記

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本題からは外れるのですが、華強北の割りとど真ん中にvivienne westwoodの店がありました。
オフィシャルサイトにはLuohuのしか載ってないですが、ここには載っています。
http://www.modamiahk.com/en/vivienne-westwood-china/

電気街のど真ん中にvivienne westwoodって凄いですよね。華強北はcoolだと思わせるものがあったのでしょうか。いつまで存在するのかはわかりませんが。

参考

人類史上最速で成長する都市「深セン」で何が起きているの / DIAMOND online

深圳のバイオレット・スーが教えてくれた、Makerムーブメントの本質(前編) / エンジニアtype

深圳のバイオレット・スーが教えてくれた、Makerムーブメントの本質(後編) / エンジニアtype

ハードウェア開発の「伽藍とバザール」 / Wireless Wire News

深センの公板/公模 700円の粗悪アクションカメラに見るイノベーション / fabcross

3月読了

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